新築であればスマート省エネの導入は難しくありません。難しいのは、台湾の建物の大半を占める老朽建物です。後付けのスマート化は、工事の面でも費用の面でも二の足を踏むもの。しかし、最も省エネが必要なのは、まさにそうした建物です。華辰セキュリティの着眼点はシンプルでした。これらの建物には、すでに「目」がある

講演の背景:老朽建物のスマート省エネは、どこで行き詰まるのか

新築の建物であれば、施工段階でスマート監視と省エネ自動化を一括して計画できます。しかし老朽建物に後から追加する場合は、配線工事、構造への影響、機器の入れ替えが避けられず、費用も工期も大きな壁になります。

高御恆氏は講演のなかで、華辰は「老朽建物を一気にフルスペックのスマートビルへ」とうたうつもりはなく、視点を変えるのだと述べました。これらの建物ではこれまで、管理員や警備員が毎晩、各階を何度も巡回してきました。照明は消えているか、扉は閉まっているか、エアコンは切れているか——ついでに異常がないかも確認する。「目」(既存の監視システム)も、巡回という習慣も、実はまだそこにあるのです。

センサーの限界:「何かあった」は分かっても、「それが何か」は分からない

華辰の基盤は、Everspring(エバースプリング)グループが自社開発し EN 50131-G2 認証を取得した無線 IoT スマートセキュリティシステムです。配線工事が不要で建物の構造を傷めず、出入口、機械室、車路といった要所に設置できます。ただし講演では、センサーの 3 つの限界についても率直に語られました。

「防犯イベント」から「エネルギー点検」へ広げるには、AI に画面全体を理解させる必要があります。それこそが、映像に VLM を加えることで補える層でした。

VLM で AI に画面を「読ませる」

VLM(視覚言語モデル)と従来の画像認識の違いは、講演のなかで最も時間を割いて説明された部分です。

従来の画像認識 · 物体検出のスペシャリスト

  • 「その物体があるか」だけを判定し、枠とラベルを返す
  • 検出項目を増やすたびに、再アノテーションと再学習が必要
  • 「人がいる」は分かるが、状況は理解できない
  • ルールが硬直的で、誤報が多くなりがち
  • 制御パネル上の文字や数字は読めない

VLM(視覚言語モデル)· 画像も文字も読み、推論できる

  • 画面全体の「状況」を理解し、推論までできる
  • 一文の指示を書くだけで判定を追加でき、再学習が不要
  • 枠とラベルに加え、文章による説明と根拠も返す
  • 状況判断と組み合わせるため、誤報が少ない
  • エアコンパネルの温度など、計器の文字を直接読み取れる

3 つのユースケース:鍵は「オンかオフか」ではなく「人がいるかどうか」

ケース 1:深夜、照明は消えているか

毎晩の決まった時刻(例えば 23:00)に、各カメラの映像を自動で解析します。照明が消えていれば正常なので通知しません。照明が点いていても画面内に人がいれば残業の可能性があり、これも正常とみなします。照明が点いているのに人がいない場合にのみ異常と判定し、管理員に通知して対応を促します。

ケース 2:エアコンは?さらに、設定温度は?

古いエアコンは必ずしもスマート機種やネット接続機種ではありませんが、カメラは制御パネルを「読む」ことができます。エアコンが停止している場合、あるいは稼働中でも人が使用している場合は正常です。エアコンが稼働しているのに画面に人がいない場合は、停止しに行く必要があります。さらにパネルに表示された設定温度も読み取れるため、規定値を下回っていれば(規定 26°C に対して 20°C 設定など)同じく異常として扱います。

ケース 3:扉が閉まっていない、人はもう帰ったのか

同じ 1 回の巡回で各出入口と共用部を回り、防犯リスクの確認とエネルギーのムダ取りを同時に行います。外扉や共用部の扉が長時間開いたまま人がいなければ、冷暖房が逃げるムダであると同時に防犯上の弱点でもあります。閉店後や退社後に照明とエアコンが点いたまま人がいなければ、それは一晩分の電気代です。

「照明が点いている、エアコンが動いている、扉が閉まっていない——それ自体は問題ではありません。『人がいないのに、まだ動いている』ことこそがムダです。状態に状況を重ねて読み解いて、はじめて賢いと言える。それが VLM の価値です。」
— 華辰セキュリティ 企画開発本部 高御恆 アソシエイト・ヴァイスプレジデント

導入方法:既存の監視につなぎ、4 ステップで運用開始

この手法の前提は工事不要・ハードウェアの入れ替え不要であることです。既存の録画装置(NVR)に接続し、新しいカメラは設置しません。24 時間の連続解析ではなく、毎晩スケジュールに沿って各カメラの映像を取得します。まずゲートで素早くふるい分け、次に詳細に判読する 2 段階のフローにより、計算資源を節約しつつ精度も高めます。最後に監査可能な記録を残し、異常があった場合のみ LINE またはアプリで管理員に通知します。

脱炭素の意義:大規模改修をしなくても、老朽建物は省エネできる

講演は、華辰が手がける台北市内の 20 戸規模のコミュニティの事例で締めくくられました。もともとは 24 時間常駐警備でしたが、警備費が上昇し管理費を圧迫。そこで日中は常駐警備員、夜間は AI イーグルアイに切り替え、既存のカメラを統合したうえで緊急ボタンを追加しました。警報は AI の判読を経てリアルタイムで監視センターへ送られ、必要に応じて 110 / 119 に直接通報します。安全性を落とさずに、費用は半減しました。

「短期間で老朽建物をフルスペックのスマートシステムへ引き上げることは、私たちにはできません。しかし既存の監視映像をバックエンドで AI 解析することで、管理の方法をもう少しだけ賢くすることはできます。」
— 講演の結び.正直なポジショニング

座談会プログラム

時間プログラム司会/講演者
14:10–14:30産業競争力支援チームの業務とリソースの紹介姜義峻 マネージャー
工業技術研究院 首都圏経営部
14:30–15:00AI 技術の発展トレンドと、国内外のエネルギー管理・低炭素転換の応用事例馮明惠 理事長
SMART LISA
15:20–15:50産業事例:夜間巡回から日常の省エネへ——既存監視システムの第二の人生高御恆 アソシエイト・ヴァイスプレジデント
華辰セキュリティ
15:50–16:20産業事例:AI——スマートビル推進の現在進行形巫政彥 CEO
玉霖建設
16:20–17:00総合交流・意見交換ご参加の皆様

本ページは、当日の講演内容を基に華辰セキュリティが編集したものです。プログラム情報は主催者の公式発表を優先します。